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CSLABアートジャーナル “Search&Destroy”3

<10年目のマイルストーン  原田郁>  

2019年10月 

 

          

 

私はコンピューターの中に架空の世界をつくり

その中に自分自身が立って見える風景を描いています。
 

2008年末に構想を立て描き始めおよそ8年以上が経ちますが、

この架空の世界をアップデート(更新)とアーカイブ(記録保存)し続けてきて今に至ります。

この世界は生まれ故郷の山形県の盆地や最上川の景観とをベースに造り上げ、展開しはじめました。

はじめは引っ込み思案な自分の為のシェルターのような場所でした。

2011年の東北大震災を経験し、一度は精神的に制作するのが辛すぎてどうしようもない時期もありましたが、

改めてアイデンティティを見つめ直す機会となり
さらには東北の再建と復興への祈りや、同時に歴史をアーカイブ化していく事への重要さなどに意識もしはじめました。
”デジタル”なものを敢えて手で、絵の具で描き起こすという作業を通し

私はこれからの時代を生き「確かに」記録していきたいと思っています。 

                   

                                                          2017年3月

 

 

 

 

 私は コンピューターの中に架空の世界をつくり

 その中に自分自身が立って見える風景を描いています。

 

 この架空の世界は

 幼少の頃から見つめてきた生まれ故郷・山形の盆地や最上川の景観と

 過去、また、今在る私の心的情景が交差した

 

 限りなく自由で広大な

 そして希望溢れる  ひとつの「確かな居場所」なのです。 

                   

                               2014年4月

 

 

 

部屋を出る。

 

飛び込んでくる目の前の景色に 

途切れず繋がれてきた目にできないものたちの

ありのまま がそこにある  と気づかされる。

なのに 私自身の肝心な場面は途切れ途切れあいまいで 

それはひとり

強い日差しに 影を奪われた時 はっきりとした景色になる。

 

自分を知るには 本当に大切なものを知るためには

いつでもここから離れる準備と訓練が必要だ。

 

でも結局まだどこへも行くことができない私は

いつもの部屋に帰り 小さな壁を目の前にして

そんなことを自分勝手に考え 

何かに解き放たれる瞬間を 何にでもなれてしまえる瞬間を

そしてその「瞬間」を永遠に引き伸ばし続けられる翻された消失点を 

さがしてさがしてさがして

 

それでもなお 幾度も歩き回り 

旅のようなものを続けている。                                2012年12月

 

 

 

 

 

今、私達は小さなデスクスペースとPCひとつで何処にでも行け、何でも出来てしまいます。

ネットグローバル化の現代は、その表層だけでリアリティを得られる革新的な時代である一方で、

現実世界では物事の真意・質や量・時間・場所性までもが意味をなさなくなって

すべてが均等なボリュームで存在し、自分の存在までもが宙に浮いているように思えます。

 

そんな世界で、私は自身のインナースペース探しを始めました。

そのスペースでは散歩したり思考したり、風景をスケッチしたりとゆったりと時間を過ごしています。

 

そしてその場所でスケッチしてきたものを私の小さなアトリエで描き直す。

そんなやりとりをして 自分の居場所の確認をしています。

 

                   

 

                                 2010年12月

 

 

 

 

 

わたしは帰省するときまってぐるりと散歩する。

 

上京し10年経つが、町並みは少しずつ景色を変えながらも

いつも変わらずそこにかまえているのは村山盆地の東に甑岳、西に葉山、

そしてその真中をゆうゆうとゆく母なる川、最上川。

 

それらを眺めていると、ぎこちない身のこなしで不器用な感情表現しか出来なかった頃のもどかしさや、

その時間を共に過ごした人たちの姿が鮮明に蘇り、と同時に懐かしさと愛おしさでいっぱいになる。

こうやって生まれた想いは何度も反芻させてはゆっくり結晶化され、私を作品作りに向かわせる。

帰る場所、待っていてくれる場所があるというのはなんて幸せなことだろうと思う。

 

                                

                                                                                                                             2010年10月

 

 

 

 

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