個展 In the Window
2023.12.8-2024.1.21

個展「In the Window」では、仮想世界から切り出した風景を絵画として提示し、窓を媒介に内と外が往復する構成を試みた。会場となるアートフロントギャラリーの窓枠を取り込み、絵画と展示空間が重なり合う入れ子状の状況をつくることで、視線が複数の空間を行き来する体験を生み出している。仮想空間を二次元(絵画)へ転位させるだけでなく、立体的モチーフを現実空間に配置し、三次元と二次元の知覚が反転する場を構成した。とくに《color trees》の立体化により、仮想世界の要素が現実空間に具現化され、そのリアリティが立ち上がる状況を示している。
窓というテーマは2011年頃から継続して扱ってきたもので、絵画が持つ「イリュージョンを提示する装置」としての古典的な文法に基づく。同時に、仮想世界はコンピュータ画面を現在の窓枠として捉えることで構造的な類似性を持つ。また窓は外界を示す装置であると同時に内面を映し出す媒介でもあり、自身の心的風景を描くためのレイヤーとしても機能している。
撮影:野口浩史 提供:アートフロントギャラリー
原田郁の現実的仮想世界絵画In the Windowによせて——
畠中実 (NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] 主任学芸員)
原田郁は自身が描く対象としての風景を、自身で3DCG(コンピューター・グラフィックス)を用いて制作したのち、絵画として作品化する。それはどこか倒錯したアイデアのようにも思われる。少なくないアーティストたちが、3DCGを手段として制作を行なっている現在、作品を仮想世界それ自身で完結させず、むしろそこから制作をスタートさせるという方法は、ある種の迂回にも感じられなくはない。なぜ3DCGで仮想世界を創出するだけではなく、さらにその空間をモチーフとした絵画を描かなければならないのか。それは新型コロナウィルスの感染拡大後の状況と重ねあわされもしたが、やはりそれは原田が画家だから、ということになるのではないだろうか。
アルベルティによって絵画はひとつの窓に喩えられたが、実際には、絵画は現実空間に開かれた仮想世界への入り口ともいえるだろう(絵画は窓をふさぐカーテンのようになったとも言われたけれど)。壁に掛けられた絵画は、いかにも窓の如く、私たちの視線を窓の奥の空間へと貫通させる。それは遠近法的な現実空間の延長というイリュージョンのみならず、絵画空間というオルタナティヴな空間へと拡張するものとなった。
現在では、コンピュータのユーザ・インターフェースとしてのウインドウと重ね合わされるように、窓には空間を媒介するという含意がある。窓をあけることで新たな世界がひらける。窓は外界の空気を入れ込み、内と外を交通させる。窓の外の風景が室内の借景になる。窓とはそれぞれが区切られた世界をつなげるインターフェースとしてある。
今回、原田が試みるのは、絵画空間、現実の展示空間、そこに実体化した絵画内のモチーフ、ギャラリーの外から見える窓の中(の展示空間)、という、より内と外を多重にレイヤー化し、それらを視線によって交通させるインスタレーションである。モチーフとしての仮想空間から、窓によって切り取られた絵画への転位、これらは、3DCGの仮想空間を2次元化したものだが、それだけではなく、新たな試みとして、仮想空間での3次元性を現実空間で実際に実体化することで起こるイリュージョンに着目している。ヴァーチュアルなものがリアルに存在することで、場合によっては3次元の立体が2次元的な絵画として現れるような、より錯視的な空間が現出する。
そこではさまざまな次元の空間が、相互に貫入し合いながら、しかし、空間全体を錯視的な空間に変容させる、さらには窓外の空間にまで拡張された世界が作られている、ということなのだろう。
原田郁 個展「In the Window」
会場:アートフロントギャラリー
◼︎関連トークイベント
畠中実 氏(NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] 主任学芸員)x 原田郁(作家)
開催日: 2024.1.12



























