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東京現代

2023.7.7-7.9

d_IkuHarada

アートフェア「Tokyo Gendai」にて、アートフロントギャラリーのブースで川俣正とともに作品を展示した。本展示では「現代におけるリアリティ」を手がかりに、現場の出来事や制作の過程を重視する川俣の実践と、コンピューター上に構築した仮想世界を絵画へと転位させる自身の制作が並置された。異なる方法によって現れる風景を通じ、それぞれのリアリティの立ち上がり方が静かに示される構成となった。




展示テーマ:現代におけるリアリティとは何か?

今回、アートフロントギャラリーのブースでは、80年代から世界で活躍する日本を代表する現代美術家 川俣正 と、コンピューターグラフィックスをモチーフに絵画作品を作る83年生まれの作家 原田郁 、二人の作品を中心に展示を構成します。

この2人の作品を同時に見せることで、時代による「存在・リアリティ」の在り方の違いをあぶりだす展示にすると同時に、同じ日本(アジア)において各時代に現れた2人のパイオニアの重要性を問いかけます。

特に原田にとっては、約15年ほど前からコンピューターグラフィックスを用いた絵画制作を行うという先駆的な表現の重要な立ち位置を、より多くの世界の人々に知っていただく貴重な機会となることでしょう。



川俣正 Tadashi Kawamata

川俣正はドクメンタやベニスビエンナーレにも参加した1980年代から現在に至るまで最前線で活躍する日本人作家のひとりです。

1984年にアートフロントがギャラリーを始めた直後に、川俣は我々と初めての個展を開催しました。”工事中”と題されたその展示は、当時代官山にオープンして間もない最先端の住居とお店の複合施設ヒルサイドテラスを木材で取り囲むというものでした。その姿は、ギャラリーやショップの営業時間も関係なしに、まるで工事現場のように真新しい建物を取り囲んでしまいました。当時その姿は、アートとしても誰もなしえたことがなく、あまりにも前衛的過ぎ、ゆえにその作品は周囲の人々の理解をえることができず、開始からわずか2週間で撤去を余儀なくされました。しかしこれは皮肉にも、ある週刊誌の報道によって川俣の作品に、アートの新しい可能性として注目が集まった直後のことでした。


その後、アートフロントでは2017年に川俣が当時(1984年)のリベンジとして、“工事中-再開”という展示を開催。この時には、川俣は世界中のあらゆるプロジェクトで名を馳せており、一部公道への張り出しの安全性を行政から指摘はされたものの大きな混乱はなく地域住民にも積極的に受け入れられました。

川俣の仕事は、今、目の前で起こることそのこと自体がリアリティです。川俣はワーキングプログレスという、制作行為自体が作品であるという概念を初めてアートとして考えた作家のひとりと言えます。目の前で絶えず変化していく物体と、そこに関わる人間の関係性などを含めた変化を目の当たりにすること自体を作品と捉えます。そしてそれは、制作が進行の中で急な変更を余儀なくされたり、頓挫することもすべて作品となり得るのです。ゆえに、川俣の作品は、その過程において生まれたすべての出来事(録音や映像、メモまで)、ドローイングや、模型などの成果物(時にそれは行為の結果の残骸)が作品としてアーカイヴされています。



原田郁 Iku Harada

原田郁は80年代、家庭用PCが生まれた時代に生を受けました。原田の幼少期にはwindows 95の参入により本格的にPCが家庭に入り始め、原田が大学で学んでいた2000年代にはWindows2000, Apple社のiMACなど本格的に実生活と結びつき始めました。ポリゴン加工のイメージがプレイステーション2などのゲームを通して認知されたのもこのころです。


当時原田はこういった状況の中で自分だけのオリジナルでかつ、一生続けることができる表現は何かと自問自答しました。日常におけるありとあらゆるものが、歴史の中で描きつくされていると思った原田は「これまで誰も描いてこなかったもの」、「今後も続いていくもの」、「自ら発展させることができるもの」という3つの要素を満たす表現を考えました。その結果、原田が”インナーワールド”と呼ぶコンピューターグラフィックスによる自分だけの仮想世界を作り出すことに到達したのです。


その作風は初期にはその3D化されつつも単純な形態を持つその仮想世界をキャンバスに描き、仮想空間を現実的にフィジカル化させるだけでしたが、作家はこの約20年で実に多くの試みを重ねて、世界にも類をみないかたちの絵画モチーフに発展させました。さらに、仮想現実空間を実体化させるだけでなく、現実世界の空間的モチーフを仮想空間に反映させることで鑑賞者を双方の世界に行ったり来たりさせる作品へと展開させています。おそらく原田は、PCのイメージをモチーフにした作家の中で唯一性を持つパイオニア的存在であり、昨今の日本の主力であるデジタル系アーティストからも一目を置かれる存在ともいえるかもしれません。(NTTコミュニケーションズのICCにおける展示でも、唯一絵描きとしてそのグループ展に立て続けに参加している)


そんな原田にとってのリアリティは、象徴的であり、感覚的です。コンピュータの進化によって現在私たちのリアリティは知覚的にその範囲を拡張されつつあります。世の中ではAR、VRといった方法で視覚は拡張され手では触れることのない、(そういった意味では)実在しない世界へと足を踏み入れ始めています。これまで我々が信じてきたリアルとは何かと改めて問われるような時代に突入しているのかもしれません。そんな現代の中で、原田は実に巧みに独自の世界観を作り出しています。コンピュータ上に約15年かけて作られ続けた原田のインナーワールドは、概念的に単純化された海に浮かぶ島の形態をとっています。地面は草原をイメージする緑の平面で表され、その上に立つ草木も形を単純な形態をしています。色はコンピュータらしいはっきりした彩度と不透明な面で表現。これらの形や色は現実世界とは全く違うものの我々がそれはなんであるかを理解するのには十分な要素を備えており、作家が描くために切り取った矩形の中に現れる様子は風景であると即座に認識できる形を有しています。原田はこういった誰にでも伝わりやすい象徴的なイメージで構成された仮想現実を絵に描き、彫刻として作ることで、自身の脳内イメージを作品としてこの世に顕現させています。近年ではこれらにさらに錯視の要素を加え、あること、ないことのリアリティを曖昧なものとし我々に目に見える存在の不確かさを問いかける仕事をしており、表現の幅を広げています。


今回アートフロントギャラリーのブースでは、2人の異なる「リアリティ(存在)」と向き合い表現を続ける作家の作品を展示します。

あなたにとっての「リアリティ」は何なのか?ぜひ、ブースにきて作品を体感してみてください。





アートフェア 東京現代

会場:パシフィコ横浜 E06(アートフロントギャラリー)

https://tokyogendai.com

出品作家:川俣正、原田郁


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